海外FXは個人だけでなく法人でも取引が可能です。
法人で取引をする場合は、海外FXの法人口座を開設する必要があります。
本記事では海外FXの法人口座というテーマで、概要からメリット・デメリットまでを詳しく解説していきます。
海外FXの法人口座とは
海外FXの法人口座とは、個人ではなく法人で運用を行うFX口座のことです。
FXは一般的に個人トレーダーが取引をするものと考えらがちですが、大口の取引などであれば税制面で法人口座ならではの優遇が受けられる場合もあります。
海外FX業者によっては法人専用の口座として提供しており、法人である証明を提出後に専用口座で開設を行うことで利用できます。
個人口座との違い
以下は、法人口座と個人口座の違いをまとめた表です。
項目 | 法人口座 | 個人口座 |
---|---|---|
税金の種類 | 法人税 法人住民税 法人事業税 | 所得税 住民税 |
経費計上できる項目の数 | 多い | 少ない |
損益通算 | 可能 | 不可 |
損失繰越 | 10年まで繰越可能 | 不可 |
赤字の場合 | 法人住民税が課税 | 課税なし |
口座開設時+口座維持のコスト | 法人登記費用 法人格維持費用 | なし |
口座開設コスト | なし | 法人登記費用 |
未決済のポジション | 利益に含まれる | 利益に含まれない |
海外FXの個人口座では所得税と住民税が課税されますが、法人口座では法人税、住民税、法人事業税が課税される仕組みです。
日本では所得に応じて課税額が上がる累進課税制が採用されていますが、法人税は資本金1億円以内であれば税率15%~25.5%の税率となります。
つまり、法人口座での税率が個人口座での税率を下回るようであれば、法人を作って法人口座で取引をした方がお得になる計算です。
その他にも、損失繰越制度や経費計上の幅が広がるといった恩恵が受けられます。
法人口座を開設できる海外FX業者
法人口座を開設できる海外FX業者は限られています。
日本人が法人口座を開設できる業者の中でも、トレーダー人気の高いブローカーを3社紹介します。
- AXIORY
- TitanFX
- Exness
- iFOREX
- BigBoss
- HFM(HotForex)
AXIORY
海外FXで高水準の取引環境を提供するAXIORYは法人口座を提供しています。
スプレッドが狭く約定力が高い特徴があります。
スキャルピングも公認されているので、法人口座で取引回数を多くしたい方に適していると言えるでしょう。
AXIORYでは合計5種類の口座タイプが提供されていますが、法人口座でも各種口座を自由に選択可能です。
法人口座を使って効率的にトレードしたい方には特におすすめです。
TITAN-FX
TitanFXもAXIORYと同様に高水準の取引環境が魅力の海外FX会社です。
個人口座だけではなく、日本法人口座と海外法人口座が開設できます。
口座タイプ | 最大レバレッジ |
---|---|
マイクロ口座 | 1,000倍 |
スタンダード口座 | 500倍 |
ブレード口座 | 500倍 |
口座タイプは上記3種類で、マイクロ口座であれば最大1,000倍の高レバレッジがかけられます。
海外FXの中でもスプレッドが狭い会社なので、法人口座でスキャルピングをしたい方に適していると言えるでしょう。
Exness
最大レバレッジが無制限で人気のExnessでも法人口座の開設が可能です。
Exnessで法人口座を開設するには、以下の条件を達成する必要があります。
- 個人での取引実績があること
- Exnessのシグネチャー会員であること
まずは、個人口座での実績が必要となります。
最初から法人口座を開設できないので注意してください。
ランク | 累計入金額 | 四半期毎での取引量 |
---|---|---|
プリファード | 20,000ドル | 5,000万ドル |
エリート | 50,000ドル | 1億ドル |
シグネチャー | 100,000ドル | 2億ドル |
また、Exnessのランクでシグネチャー会員であることが条件となります。
法人口座でハイレバレッジの取引をしたい方は、上記条件を達成してから申請しましょう。
iFOREX
iFOREXは、海外FXの業界で長年の実績を誇る老舗の会社です。
銘柄数が豊富なので、法人口座で通貨ペア以外の株価指数や株式をトレードしたい方に最適と言えるでしょう。
最大レバレッジは個人口座と同様に400倍と若干低めです。
また、スキャルピングは禁止されているので、長期トレード専門の口座として利用すると良いでしょう。
HFM(HotForex)
HFMは、海外で実績豊富な海外FXです。
以前はHotForexという名称でしたが、現在はHFMに名称が変更されています。
HFMでは、独自のコピートレードシステムが提供されており、法人口座でも稼働することが可能です。
FXに割く時間のない方が、法人口座で自動の運用をするのに適しているでしょう。
海外FX法人口座のメリット
次に、海外FXで法人口座を利用するメリットを紹介していきます。
法人口座の検討をしている方は、ぜひ下記を参考にしてみてください。
経費の幅が広がる
海外FXの法人口座を利用することで、経費として計上できる幅が広がります。
個人口座の場合は、FXに使うもの、またはFXの勉強で使ったものなどが経費として計上できる仕組みです。
個人口座はパソコンや書籍代、インターネット回線(FX時に利用した分)のみと、経費の幅は限定的となっています。
海外FXの法人口座では、家賃、光熱費、役員報酬、交通費、生命保険料、退職金なども経費として計上できるので、税制面での優遇を受けることができるのです。
節税効果は大きく、手元に残る利益分が多くなります。
個人の場合、家賃や高熱費などはFXに使った分のみを細かく申告する必要がありますが、法人の場合であれば全額計上できます。
税率面で優遇される
海外FXの法人口座は、個人口座に比べて税率の面で優遇されます。
以下は、個人での税率と法人での税率を表したものです。
- 個人の場合→所得税5%~45%
- 法人の場合→法人税15%~23.2%
個人では4000万円以上の所得があった場合に、最大税率の45%が適用されます。
330万円超~695万円以下の所得で30%の税率が適用されるので、30%を下回る法人税の方がいかに税金を抑えられるかが分かります。
個人での税率を下回るような所得であれば、法人ではなく個人で続けた方が得ではありますが、大きく稼げるトレーダーであれば法人口座で税率の恩恵を受けた方が良いと言えるでしょう。
損失の繰り越しができる
海外FXの法人口座では、損失の繰り越しができます。
損失の繰り越し制度は海外FXの個人口座では適用されません。
個人口座適用されないのはあくまでも海外FXの場合のみで、国内FXであれば最大3年間の損失繰越が可能です。
前年や過去に損失が出ていたとしても、翌年にはリセットされることなく、利益の申告額を抑えることが可能です。
課税対象となる金額が少なくなることで、必然的に節税に繋がります。
個人口座では毎年リセットされる反面、法人口座での損失繰越制度は大きな魅力と言えるでしょう。
他の事業と損益の通算ができる
海外FXの法人口座は、他の事業と損益の通算が可能です。
法人口座を開設するために法人を設立して、FXだけでなく他の事業も行っていたとします。
FXでは充分な利益が上がったが、他の事業では赤字が出ていた場合、FXの利益-他の事業の損失が課税対象になる仕組みです。
同じ年度の利益と損失が相殺できるので、充分な節税効果が得られます。
海外FXの個人口座であっても、同じ税制区分の所得や損失であれば相殺できますが、あくまでも同じ税制区分と限定的です。
法人口座では、「その年に法人が得た収益や出した損失の全て」を合算して計算できるので、申告の面でもシンプルな仕組みが取られています。
海外FX法人口座のデメリット
次に、海外FXで法人口座を利用するデメリットを紹介していきます。
法人設立のハードルが高い
法人口座を開設するには、まず前提として自身で法人を立ち上げないといけません。
法人を設立するには、最低でも以下のコストが発生します。
- 株式会社→約25万円ほど
- 合同会社→約10万円前後
気軽に設立できるというものではないので、設立をする際は自身の境遇をよく把握してから行うようにしましょう。
また、法人は維持する際にもコストがかかります。
法人税 × 12.9%+均等割(均等割→従業員数、資本金額によって異なる)
上記は法人住民税という税金で、赤字であったとしても支払いの義務が生じます。
法人での確定申告は個人に比べて複雑なものとなるので、場合によっては税理士への依頼などでコストがかかる場合もあるでしょう。
利益が自由に引き出せない
海外FXで法人口座を開設して、FXでの利益が出たとしても利益は自由に引き出しができません。
法人口座で出た海外FXの利益は、法人を設立した個人(社長や役員など)のものではなく、あくまでも法人のお金になります。
自由に引き出してしまうと課税対象の把握がしにくいほか、結果的に所得税を支払うはめになって、個人よりも多くの税金が課せられるケースもあります。
また、役員報酬の金額は一度決めてしまうと、事業年度の途中では引き出すことができないので、利益が上がったor損失が出たいずれのケースであっても翌年以降に引き出す方が良いです。
海外FXの法人口座を設立する際は、社長1人だけでなく配偶者などを役員にして報酬を受け取るという方法をとる方が多いです。
法人口座を開設できる業者が限定的
法人口座は、全ての海外FX業者で開設できるわけではありません。
法人口座専用の開設窓口のある業者でしか開設できないので注意しましょう。
- AXIORY
- iFOREX
- TitanFX
- FXGT
- HFM
日本人人気No1のXM Tradingのような会社では、法人口座に対応していません。
業者によって取り扱い銘柄が異なるほか、レバレッジの制限なども大きく変わってくるので、開設を検討している方は自身が現在使っている会社が法人口座に対応しているかをよく確認しておきましょう。
海外FXで法人化をするタイミング
現在個人で海外FXの取引をしていて、法人口座での税制優遇を受けたいと考えている方は、年間所得が900万~1000万を超えた時が法人化の良いタイミングと言えます。
900万円を超えると、個人で稼いだ時にかかる年間の税率が法人で稼いだ年間の税率を超えるタイミングです。
課税対象となる利益の額 | 税率 |
---|---|
400万円以内 | 約22% |
400万~800万円 | 約25% |
800万円以上 | 約35% |
法人化した場合は、800万円を超えていくら稼いでも35%(一律)が税率となります。
それに対して個人の場合は、年間所得900万円以上1800万円以下で合計43%(所得税33%+住民税10%)の税率が課せられる仕組みです。
海外FXで法人化を検討している方は、900万~1000万円の利益を上げられるようになったタイミングを目安にして法人口座の開設をしましょう。
1年間だけ利益が出せた場合の法人化には注意です。法人を開設した時点では赤字でも法人住民税を支払う必要があるので、複数年で安定した利益が出せたら法人化を検討しましょう。
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